gokazoku絵本によって育てられる大切なもの

listleaf肉声による語りかけ

子どもたちのことばの力は、まず聴くことによって育てられます。それもその子に向かって、心を込めた肉声による語りかけこそが、子どものことばの力・心を育てていくのです。

 今、ご家庭において肉声によるコミュニケーションが、以前と比べて希薄になっているのではないでしょうか。肉声に取って代わる機械に よる音と光が溢れているのが現状です。テレビ・DVD・ゲーム・インターネット・携帯とメディアの多様性は拡がるばかりで、最早それら抜きでは、日常生活 が成り立たないと言っても過言ではありません。そのような状況のなかだからこそ、肉声の果す役割も大きいのだと思います。

絵を読む力

もちろん、素ばなしやわらべ歌、手遊びなども重要なコミュニケーションの手段です。絵本もそのひとつと考えられますが、絵本にしかで きないこともあるのです。それは絵を読む力です。まだ文字が読めない、読めてもその理解が充分でない子どもたちは、耳から物語を聞いて、絵という文字を読 みます。それは大人には失われた能力で、絵を読みながら絵本の世界に入っていき、主人公にもなれるし、その友だちになることだってできるのです。

そのなかで、人の気持ちもわかり、理解力や想像力が育まれ、ことばの力を身につけ、心安心できる場所と、安心できる声でも成長していくのです。絵を読む力は、文字が読めるようになると失われてしまいます、この時期にしか育てられない力だと思います。

 

安心できる場所と、安心できる声で

また、子どもは気に入った絵本を何度も「読んで」と持ってきます。これは不思議なことです。結論はもうわかっているのですから…。す ぐれた絵本には、起承転結がはっきり描かれ、結の部分は、安心できる場所に帰ってくることが多いのです。子どもは、その安心感を何度も味わいたいのだと思 います。それも安心できる場所で、安心できる声で。

ですから文字が読めても、安心できる肉声で絵本を読んでもらうことは子どもにとって格別な楽しみなのです。毎日少しの時間でもいいのです。どうぞお子さまといっしょに絵本を楽しむ時間を作ってみてください。新しい発見の連続です。 きっと何かが変わるに違いありません。

長く読み継がれる絵本の力

絵本を読むことの大切さはわかっていても、どの絵本がよいのかわからない。そうだと思います。毎月 100 冊以上の絵本が出版されているのですから、迷うのも当然でしょう。

絵本にベストセラーはありません。絵本はロングセラーの世界なのです。ただ、町の本屋さんに行っても、音の出る絵本やキャラクター絵本、アニメ絵本が溢れていて、なかなかロングセラー絵本に出会える機会が少ないというのが現状です。

 みなさんが子どもだった頃に読んでもらった絵本を、今の子どもたちも喜んで読んでいるのです。これも不思議なことです。30 年前、40 年前と現在では世の中は大きく変化しています。しかし絵本は、同じものを昔の子どもも今の子どもも読んでいるのです。

おそらく、どんなに時代が変わろうとも、子どものなかには変わらない普遍性が存在するのでしょう。そして長く読み継がれている絵本の なかにも、どの時代の子どもたちにも受け入れられる普遍性があります。その普遍性と普遍性が出会った時に、「もう一度読んで、もう一度読んで」と同じ絵本 を何度も持ってきて、ロングセラーが読み継がれていくのです。

そんなロングセラー絵本を中心に、子どもの成長や季節感、園の行事などを考慮しながら、月に1冊ずつ家庭に届けられるのが、「こひつじ文庫」というブッククラブなのです。

40年の歴史をもつ「こひつじ文庫」

それは出版社が勝手に選んだものではありません。長年保育の現場に携わってこられた先生方や絵本の専門家の先生方に選んでいただいています。それだけに子どもたちに安心して読んであげられるラインナップと言えるでしょう。

 

「こひつじ文庫」のもう一つの特色は、キリスト教幼児教育ブッククラブということです。キリスト教保育と絵本は切っても切れない関係 があります。キリスト教保育では、「ことば」が心の成長に欠かせないものとして当初から重要視されてきました。そこでは良質な絵本が求められ、「こどもの とも」なども創刊時から採用され、園の本棚には、良質な絵本が揃えられていきました。ですから「こひつじ文庫」に選ばれている絵本はほとんど、園にも置い てあり、子どもたちは園でも家庭でも同じ絵本体験ができるのです。このことは、子どもにとって、うれしいことであり、大きな喜びといえます。

 

子どもが絵本を読んでもらいたい時に、いつでも自由に選べる、そんな環境が家庭のなかにもあれば、それはすばらしいことです。ブック クラブは年間12冊です。初めは興味を示さなかった絵本でも、ある時、急に読んでもらいたくなることだってあるのです。そのなかでお気に入りの絵本ができ ると、何度も読んでと持ってくるに違いありません。

 

また「こひつじ文庫」はロングセラーが中心ですから、早く与えて早く卒業させるのではなく、長い期間じっくり読んであげてほしいと思います。それは小学 生になってからでもです。自分で読むのと読んでもらう楽しみは違うのですから…。絵本を読んでもらう楽しさを知った子どもたちは、いつか本好きな人間にな り、本を通して様々な出会いを体験して育っていくことでしょう。

文・こひつじ文庫推進委員会 吉井康文
絵・山口ゆかり